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7月20日(日曜日)にAGC株式会社サウナ部の部員20名の皆さんが西川町でサウナ体験日帰りツアーでお越しいただきました。
サウナのご縁でご来町いただきまして、誠にありがとうございました。
サウナを用いた町おこしで話題の山形県西川町が、今度は東京の大企業を巻き込んでサウナツアーを企画。
継続的に町と関わってくれる「関係人口」の増加をキーワードに、菅野町長が推進する西川の特徴を活かした独創的な政策に迫る。
今回のサウナツアーに参加したのは、ガラスなどの総合素材メーカーであるAGC株式会社のサウナ部員20名。
部長の落合氏を中心に集まった90名の有志が、毎月様々なサウナ施設で社員交流を行っており、時には企業の枠を超えた異業種サウナ部同士の“対抗戦”も行っているとのことだ。
「西川町到着後のサウナツアースケジュール(画像提供:一般社団法人 月山朝日観光協会)」
今回のツアーでは10名ずつに分かれて二つのサウナを堪能した。
一つは2023年春にリニューアルを遂げたばかりの「水沢温泉館」。
道の駅に併設する町の第三セクターが運営する温浴施設で、リニューアル工事を経てセルフロウリュ可能なサウナと霊峰月山の雪解け水が楽しめる水風呂を新たに設置された。
有名サウナ番組でも取り上げられるなど、西川町でも特に注目度の高い施設だ。
「2023年春にリニューアルされたばかりの水沢温泉館」
スウェーデン製の大型ストーブにアロマ水でロウリュをすれば、大量の蒸気で一気に発汗。
汗だくになったところで、夏場でも13℃を維持する超軟水の水風呂へドボン!
とろけるような雪解け水は、冷たいがいつまでも入っていたくなるような心地よさ。
サウナの聖地と呼ばれる「しきじ」にも負けない水質の良さが自慢で、浴槽へ注がれる水は飲むことができる。
体の内と外から雪解け水にどっぷり浸かり、室内にいながらも自然を体感できる素敵な施設だ。
「水沢温泉館でととのうAGCサウナ部の今井氏と落合氏
(※施設の許可を得て撮影しております)」
もう一つは寒河江川沿いの大井沢キャンプ場に設置されたトレーラーサウナ。
トレーラーサウナの設計にはスカイツリーを手掛けたことでも有名な株式会社日建設計が携わり、地元の西山杉を活かした木材の温かみのある造りになっている。
パチパチと薪が燃える音をBGMに、窓から寒河江川が爽やかに流れる様を望む。
「トレーラーサウナでサウナを楽しむAGCサウナ部員」
さらにサウナで汗を流した後には、寒河江川を水風呂代わりにクールダウンすることも可能だ。
寒河江川は比較的浅瀬になっているため、うつ伏せになったり腹這いになったり、各自体勢を変えながら冷水浴を楽しんだ。
キャプション:「寒河江川で冷水浴を楽しむ様子」
その後は川に設置されたリクライニングチェアで休憩。
目を閉じ川のせせらぎを聞きながらゆっくりと体を落ち着かせる。
あまりの心地よさから椅子から動けなくなるサウナ部員たち。
さらにサウナの合間には、道の駅にしかわ横のフェリシア公園にてBBQを楽しんだ。
今回特別に用意いただいた地元の「月山和牛」や月山の雪解け水で作る「月山ビール」など、西川グルメを堪能した。
西川の自然を満喫できるサウナに加えて西川で育まれたグルメも堪能し、まさに西川町を味わい尽くすツアーとなった。
「BBQで振舞われた「月山和牛」」
今回のツアー企画に至るまでには、サウナへの熱い想いが繋いだ出会いがあった。
遡ること2021年、菅野町長が内閣官房に勤めていた時代に参加した「官民オンライン研修」でAGCの落合氏と、後に西川町の政策アドバイザーとして着任する日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社の吉岡氏が偶然同じグループとなったところからすべては始まった。
その後初対面を経て、吉岡氏が菅野町長の地方創生先進地視察に同行するようになる。
2022年4月に菅野町長が着任し、翌年11月に日建設計プロデュースのトレーラーサウナが完成した。
「日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社の吉岡氏(写真提供:西川町)」
菅野町長と吉岡氏が西川町でサウナを中心とした町おこしを行っていたその頃、落合氏もAGCでサウナ部を立ち上げ、さらには昨今のサウナブームの火付け役でもあるTTNEのととのえ親方を迎えた講演会を企画し自らも登壇するなど、サウナの取り組みを活発化させる。
そして2024年頭に今回のサウナツアーの企画検討をAGC・西川町共同で開始。
「サウナで稼いで町を豊かにする」次の一手として、町外からも観光客を呼び込めるサウナツアーが有効だと睨み、プロトタイプとして西川町では初となる企業を対象としたツアーを実施するに至った。
菅野町長と落合氏2人のサウナへの熱い想いが、人口約5,000人の町に、従業員数7,000人を超える大企業を呼び込む、一大プロジェクトとなって結実したのだ。
「サウナツアーに参加したAGCサウナ部メンバー」
2022年に菅野町長が着任以降、町を訪れたり応援したりしながら継続的に町と関わってくれる「関係人口」の増加をキーワードに掲げている。
以前から「夏スキー」ができる場所として月山を知っている中高年層はいたものの、若者へリーチができていなかった。
若者をターゲットに西川の強みを生かした取り組みを検討する中で、「サウナでととのう町づくり」を企画するに至ったという。
「夏でも13℃を維持する超軟水が出る所はなかなかない。これを活かすことを考えて水沢温泉館のリニューアルを行ったところ、これが町の“特色”になり、主力産業になった」と菅野町長が話している通り、リニューアル後には水沢温泉館の施設利用者は倍増。若者からも注目される施設となっている。
さらに今後サウナツアーを拡大していくにあたり「人の温かさ」を大切にしていきたいと菅野町長は話している。
「西川には古くから出羽三山への参拝客を山菜料理でもてなしてきた歴史がある。おもてなしを行うことで、人や自然の魅力が伝わり、他の地域と違った温かさを感じてもらえるのだと考えている。今回のツアーでもBBQなどで町民を交えておもてなしをすることで、地域の魅力を伝え、温かさを伝えることができたら」
「熱波を送りAGCサウナ部員をもてなす月山朝日観光協会の阿部氏」
菅野町長の言葉から伺えるように、地方自治体としての取り組みや企業との連携、そして地域資源の活用に対する意気込みが強く感じられた。
サウナで稼いだお金をその他施設の投資に回すことで町を豊かにし、町としての魅力を高める。さらに町全体でおもてなしを行うことで、町のファン(=関係人口)をさらに増加させる狙いだ。
8月からは全国で初めてとなる“ダムサウナ”が寒河江ダムで開催されるなど、話題に事欠かない西川町。
菅野町長が推進するサウナを中心とした独創的な政策から今後も目が離せない。
※山形新聞公式Youtubeチャンネル「Press Yamashin」でも取り上げられました!
https://youtu.be/PeeVEYHkrXY?si=D6z96_LU7d8_XMrC<外部リンク>
撮影・取材・文/杉並バイブラー
AGCは、グローバルトップシェア製品を数多く有する総合素材メーカー。
1907年に創立、祖業である板ガラス生産からはじまり、時代の変化に合わせて、世の中で必要とされる素材・ソリューションを提供。
現在では、グループで30 を超える国と地域において、ガラス、電子、化学、ライフサイエンス、セラミックスなど幅広い分野で事業を展開。
「AGC、いつも世界の大事な一部」という使命のもと、いつもどこかで世界中の人々の暮らしを支えている。
https://www.agc.com/<外部リンク>
1992年東京都杉並区生まれ。
会社員として働く傍ら、サウナ愛好家「杉並バイブラー」として活動。
年間100軒以上の施設を巡り、200回以上サウナに入る生活を送る。
SNSでは「サウナレビューは読み物」をモットーに、文字数制限いっぱいの感情移入型施設レビューを投稿。
サウナ好きが高じて、東中野の銭湯、松本湯にて番台としても従事。
同銭湯のリニューアルプロジェクトにも参画し、ロゴデザインの提供とグッズの企画を担当。