身体拘束最小化のための指針
令和8年5月 西川町立病院
1.身体拘束最小化に関する基本的な考え方
身体的拘束は、患者の自由を制限することであり、患者の尊厳ある生活を阻むものである。
当院では、患者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく、職員一人ひとりが拘束による身体的・精神的弊害を理解し、拘束廃止に向けた意識をもち、緊急やむを得ない場合を除き身体的拘束をしない医療・看護の提供に努める。
2.基本方針
身体拘束の原則禁止
当院は、患者または他の患者等の生命または身体を保護するために緊急やむを得ない場合を除き、原則として身体的拘束の実施を禁止する。この指針でいう身体的拘束は、抑制帯等患者の身体または衣服に触れる何らかの用具を利用して一時的にこの患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限をいう。
緊急やむを得ず身体拘束を行う場合
- 緊急やむを得ず身体拘束を行う要件
患者または他の患者等の生命または身体を保護するための措置として、緊急やむを得ず身体的拘束を行う場合は、次の「3要件」をすべて満たした場合に限り、必要最低限の身体的拘束を行うことができる。
緊急・やむを得ない場合の3要件
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切迫性
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患者等本人または、他の患者等の生命または身体が危機にさらされる可能性があり緊急性が著しく高いこと。
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非代替性
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身体的拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないこと。
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一時性
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身体的拘束その他の行動制限が一時的なものであること。
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2.身体拘束を行う場合は、当院の「身体拘束最小化のためのマニュアル」に従う。
身体拘束等禁止の対象としない具体的な行為
当院では肢体不自由や体幹機能障害あり残存機能を活かすことができるよう、安定した体位を保持するための工夫として実施する行為については、身体的拘束等禁止の行為の対象とはしない。
- 整形外科疾患の治療であるシーネ固定等
- 身体的拘束等をせずに患者を転倒や離院などのリスクから守る事故防止対策
- 離床センサー、赤外線センサー、起き上がりセンサー
その他の日常ケアにおける基本方針
身体的拘束を行う必要性を生じさせないために、日常的に以下のことに取り組む。
- 患者主体の行動、尊厳ある生活に努める。
- 言葉や対応などで、患者の精神的な自由を妨げないよう努める。
- 患者の想いをくみとり、患者の意向に沿った支援を行い、多職種協働で個々に応じた丁寧な対応に努める。
- 患者の安全を確保する観点から、患者の自由(身体的・精神的)な安楽を妨げるような行為を行わない。
- 薬物療法、非薬物療法による認知症ケアやせん妄予防により、患者の危険行動を予防する。
- 「やむを得ない」と身体的拘束に該当する行為を行っていないか常に振り返りながら患者に主体的な入院生活をしていただけるように努める。
向精神薬等薬剤使用上のルール
薬剤による行動制限は身体的拘束には該当しないが、患者・家族等に説明を行い、同意を得て使用する。
- 不眠時や不穏時の薬剤指示については、医師・看護師、必要時には薬剤師と協議し対応する。
- 行動を落ち着かせるために向精神薬等を使用する場合は、医師・看護師等で協議を行い、患者に不利益が生じない量を使用する。また、薬剤の必要性と効果を評価し、必要な深度を超えないよう適正量の薬剤使用を検討する。
3.身体拘束最小化のための体制
以下の取り組みを持続的に実施し、身体拘束の最小化のための体制を維持、強化する
身体拘束最小化委員会の設置
院内に身体的拘束最小化対策に係る「身体的拘束最小化委員会」(以下「委員会」という。)を設置し、3か月に1回以上、委員会を開催する。
設置目的
- 身体的拘束廃止に向けて現状把握及び改善の検討をする。
- 身体的拘束を実施せざるを得ない場合の検討をする。
- 身体的拘束を実施した場合の解除の検討をする。
- 身体的拘束廃止に関する職員全体への教育研修、啓発、指導をする。(年2回以上、新採用者研修においては必ず実施する)
- 身体的拘束最小化指針等の見直しをする。
- 身体的拘束最小化チームからの情報収取と検討結果の周知
※報告、改善のための方策を定め周知徹底する目的は、身体的拘束適正化について院内全体で情報共有し、今後の再発防止につなげるためのものであり、職員の懲罰を目的としたものではない。
構成員
医師(院長、副院長)、看護師(認知症ケア委員会を含む)、薬剤師、理学療法士、事務員等
委員会の役割
- 身体拘束の実施状況を把握し、管理者を含む職員に定期的に周知徹底する。
- 身体拘束実施事例の最小化に向けた医療・ケアを検討する。
- 定期に本指針・マニュアル等を見直し、職員へ周知して活用する。
- 身体拘束最小化のための職員研修を開催し、記録する。
- 発生原因、結果等を取りまとめこの事例の適正化と適正化策を検討する。
身体的拘束最小化チームの設置
設置
身体的拘束を最小化することを目的として、身体的拘束最小化チーム(以下、「チーム」という。)を設置する。
開催と役割
チーム会は3か月に1回以上会議を開催し、次のことを検討・協議する。
- 身体的拘束の実施状況を把握し、職員に周知する。
- 委員会との連携をとり、身体的拘束最小化を推進する。
- 身体的拘束最小化に関する指針およびマニュアル等の作成・見直しを行い職員に周知する。
- 定期的な病棟ラウンドを実施する。
- 全職員を対象とした身体的拘束等に関する教育研修を委員会と連携して実施する。(年2回以上、新採用者研修においては必ず実施する)
構成員
医師、看護師(認知症ケア委員会を含む)、薬剤師、理学療法士、事務員等で構成する。
- 医師をチームリーダーとし、副総看護師長を副リーダーとする
- チームリーダーは必要と認められる職員をチームに招集することができる。
病棟ラウンドの実施
病棟ラウンドを週1回行い、次のことを確認する。
- 身体的拘束最小化マニュアルの沿った実施(手続き、方法、解除、代替案の検討等)が行われているか、患者の人権を尊重した適切なケアが実施されているか確認する。
発生した身体的拘束について、身体的拘束最小化マニュアルに沿って適切な手続き、方法で行われているか、解除に向けた検討が十分か、また、患者の人権を尊重した適切なケアが行われているかを確認する。
- 身体的拘束の状況確認
現場を巡回し、身体的拘束に使用する用具が病棟外の1カ所で管理されているか、身体的拘束が適正に行われているか、または不要な拘束が行われていないか、さらに患者の健康状態や精神的な影響がないかを確認する。
- 職員への個別指導・助言
身体的拘束の最小化に向けて、職員に対して適切な対応方法を指導し、改善点を共有する。
記録及び周知
- チームでの検討内容・結果については議事録を作成・保管する。
- チームで検討した内容や実施状況は委員会へ報告する。
4.身体的拘束廃止、改善にための職員教育
医療・ケアに携わるすべての職員に対して、身体的拘束廃止と人権を尊重したケアの励行を図る職員教育を行う。
- 年2回以上、新採用者研修においては必ず実施する
- 研修にあたっては実施日・実施場所・方法・内容等を記載した記録を作成する。
5.やむを得ず身体拘束を行う場合の対応(緊急時も対応、注意事項)
患者または他の患者等の生命または身体を保護するための措置として、緊急やむを得ず身体的拘束を行わなければならない場合、以下の手順に従って実施する。
- 記録、集計、分析、評価の専用の様式を用いて、その態様及び時間・日々の心身の状態等の観察を記録する。
- 緊急やむを得ず身体的拘束をせざるを得ない状態であるかどうかを、医師と看護師を含む多職種によるカンファレンスで検討する。必要と認めた場合、医師は身体的拘束の指示をする。
- 医師は同意書を作成し、事前に患者・家族等に説明して身体的拘束開始の同意を得る。ただし、直ちに身体的拘束が要する切迫した状況で、事前に同意を得ることが困難な場合は、身体的拘束開始後直ちに家族等に説明して同意を得る。(1)身体的拘束を必要とする理由 (2)身体的拘束の具体的な方法 (3)身体的拘束を行う時間帯・期間 (4)身体的拘束による合併症
- 患者・家族等の同意が得られない場合は、身体的拘束をしないことで起こり得る不利益や危険性を説明し、診療録に記載する。
- 身体的拘束中は身体的拘束の態様および時間、その際の患者の心身の状態並びに緊急やむを得ない理由を記録する。
- 身体的拘束中は毎日、身体的拘束の早期解除に向けて、多職種によるカンファレンスを実施する。カンファレンスでは、やむを得ず身体的拘束を行う3要件を踏まえ、継続の必要性を評価する。
- 医師はカンファレンスの内容を踏まえて身体的拘束の継続または解除の有無を指示する。
- 身体的拘束を継続する必要がなくなった場合は、早くに身体的拘束を解除する。
6.身体的拘束適正に向けた各職種の責務および役割
身体的拘束廃止に向け、各職種の専門性に基づくアプローチから、チームケアを行うことを基本とし、それぞれの果たすべき役割に責任をもって対応する。
- 院長
身体的拘束における諸課題等の責任者
- 副院長
施設内での身体的拘束廃止に向けて現状把握および改善についての検討、管理運営
身体的拘束を実施せざるを得ない場合の検討、管理運営
身体的拘束を実施した場合の解除の検討、管理運営
身体的拘束廃止に関する職員全体への指導、管理運営
- 総看護師長、副総看護師長、病棟看護師長、外来師長、看護職員等
拘束がもたらす弊害を正確に認識する
患者の尊厳を理解する
患者の疾病、障害等による行動特性の理解
患者個々の心身の状態を把握し基本的ケアに努める
患者とのコミュニケーションを十分にとる
- 医療職員
医師との連携
施設における医療行為の範囲を整備
重度化する利用者の状態観察
記録の整備
記録は正確かつ丁寧に記録する
7.多職種による安全な身体的拘束の実施および解除に向けた活動
患者が身体的拘束を行わざるを得ない状態である原因によっては、患者の病状および全身状態の安定を図ることが、安全な身体的拘束の実施、早期解除につながる。
各職種は、身体的拘束における各々の役割を意識して患者にあたる。
8.この指針の閲覧について
当院では身体的拘束廃止に関する指針は、求めに応じていつでも院内にて閲覧できるようにするとともに、当院のホームページにも公表し、いつでも患者及び家族が自由に閲覧できるようにする。
附則
本指針は、 令和6年11月1日より施行する
この指針は、令和8年5月19日より改正施行する